犬の森 しばいぬ部

チャーリードッグスクール「犬の森」のメンバーによる犬が好き♪な人のための徒然日記

エキノコックスを語るおじさま

こんにちはテルモ母です。

 

もう3週間ぐらい前でしょうか?

テルモといつもの公園内を朝ん歩してたら

ひとりのおじさまに呼び止められました。

道端の雑草のこんもりした繁みに鼻を突っ込んでいるテルモを見ながら

「このへんはキツネ出るでしょう?だから気をつけたほうが良いですよ。」と。

 

そうなんです、出るんですキツネがすぐそばまで。

もちろん、この辺に住んでいる人はみんな知っていて心得ています。

 

「そうですね、たくさんいますよね。」と答えたら

おじさまは

「雑草にもキツネのおしっこがかかっているからね。」と自信たっぷりにおっしゃった。

『はて?』と思ったので

「あれ?おしっこにもエキノコックス出るんでしたっけ?」と尋ねると

「そうそう。だからよく沢の水飲んだらダメって言うでしょ。あれはキツネのおしっこが水に交じるからさ。」

またもや『はて?』と思ったので

「おしっこに出るとは知らなかったです、初めて聞きました。」と言うと

「みんな知らないんだよね。」と。

 

テルモが前に進みたそうだったので会話はそこで終わって失礼しました。

 

さて、私としてはいろいろ納得がいかないので帰宅して調べました。

ラッキーなことに私には、高校時代の友人で、寄生虫研究者がいるんですね。

彼は、獣医学部を卒業したあと寄生虫学教室に残ってエキノコックス研究を。

今から30年以上前なので、エキノコックスの名前がようやく一般人にも知られ始めた頃でした。北海道でも、今のように人間の生活圏にはキタキツネが出没することはなくて、キタキツネに会うのは道東の原野ぐらいでした。

その頃、彼は道東にフィールド調査のためによくキツネの糞を拾いに行っていました。

国内のみでなく、モンゴルの大平原にネズミの糞を拾いにも行ったりして、現地民の恐ろしく視力の良いエピソードなど、わくわくする土産話を友達みんなでよく聞きました。

研究チームを案内してくれてたモンゴル人ガイドが

「ヘイ、タカ(友人の名前)。今、1㎞先でネズミが顔出したのが見えただろ?」

と教えてくれるんだそうで。

当然、日本人研究者は誰ひとりとして1㎞先のネズミは見えるわけもなく…。

 

すみません、脱線しました^^;;;

 

 

エキノコックスに感染したネズミを食べたキツネがエキノコックスになるのです。

つまり、エキノコックスは消化管(小腸)に寄生するわけです。

エキノコックスの親虫の大きさは4㎜。

この親虫が生んだ卵=0.03㎜が、キツネの糞中に排出される。

その糞をまたネズミが食べて…というサイクルです。

キツネの糞で汚染された水が人間の口に入ると人間もエキノコックスになる可能性がある。

さて、犬はと言うと、犬の場合はキツネと同じで感染したネズミを食べることで消化管に寄生される可能性があります。

『ちょっとまって。犬がキツネの糞を食べて感染する危険はないの?』

そう思いますよね?

これはよほどたくさん食べない限りほぼないのだそうです。

なぜなら、エキノコックスは親虫の時代と子虫の時代で宿主を変えるから。

親虫時代は犬やキツネなどの動物。

子虫時代は野ネズミやまれにブタ・ウマ・ヒトなど。

 

という訳で寄生虫学者の友人に聞くまでもなく

ちゃんと順を追って考えれば

「キツネのおしっこにエキノコックスはいない」ことがわかります。

だって、消化管から入ったものがおしっこに出て来るためには腎臓を経由しなければならないわけですね?

そもそもおしっこは血液をろ過して作られたものなので、おしっこに出るのだとしたら、血液中に入っていかなければならない。

4㎜ものデカイ異物が血中に入れる?入れないですよね?

そもそも血中に入るってことは消化分解されなければならないのですし。

 

ということで立ち話中、朝ん歩の寝ぼけた頭ながらも、そこは思い当たったので

『はて?』と思ったわけですね。

でも。

あと一つ残る可能性としては、その後研究が進んで、「キツネの尿路に逆行性に侵入することがわかった」ということもないとも言えない。

それで、納得いかない私は、これは友人に確かめようと思いました。

「キツネのおしっこにエキノ出る?」と。

答えはもちろんNOだったのでひと安心。

 

いや、だってこの辺りで犬を散歩させている人にとっちゃあ、いち大事ですから!

どんな犬だって、散歩中一度たりとも草むらに鼻突っ込んで匂い嗅ぎしない犬なんて、まずいないわけですから!

逆にそういう犬がいたら、それはそれで心配です。

 

すごくややこしくて長い話になってしまって申し訳ないです。

私は通りすがりのかたと挨拶交わしてお話するのはけっこう好きです。

楽しいです。そうやって顔見知りの人が増えることは、テルモにとっても安心材料だと思いますし。考えようによっては、ひろ~~い意味での社会化。

だけど、人伝の知識には十分に注意しないといけないな。

心からそう思ったエピソードでした。

 

キツネと遭遇するエリアを毎日のように歩くかたはぜひこちらの北海道立衛生研究所のサイトでご確認くださいませ(^^) 

 

www.iph.pref.hokkaido.jp

 

テルモのかかりつけ獣医さんにも、エキノコックスのお話は時々うかがっています。

ぜひ、ご心配なかたは、かかりつけ獣医さんにも納得いくまで質問なさってみてくださいね。

 

エキノコックスだけでなく、犬に関する都市伝説みたいなものも同じ。

一歩立ち止まって考えてみる

大事ですね。

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がくの縁がフリルになった紫陽花。朝ん歩で。